個人向け貸出金の増加とアパート建設の動きの要因
日本銀行が公表する貸出先別貸出金を見ると、個人向けの融資が高水準であることが認められます。
近年の不動産価格の上昇基調や取引活性化、住宅建築動向に加え、日銀の異次元金融緩和の長期化で低金利が続いていることを考慮すると、資金を借り入れてアパートを建築する個人が増えている状況が浮かびあがります。
その理由はさまざまですが、低金利が続いているだけでなく、相続税の節税対策の意図でのアパート建築の増加が指摘されています。
多くの人が対象となった相続税の改正
相続税と聞くと一部のお金持ちにかけられる税金とのイメージを持つ方が多いと思います。
ところが2015年から相続税法が改正され基礎控除額が大きく縮小されたため、納税義務を負う人が増え相続税の額に関して心配する方が増加したのです。
具体例でいえば、従来の相続税計算での控除額は、5千万円を一律として、これに法定相続人一人当たり1千万円を加えた額でした。
従って、妻と子供2人が相続する例では、8千万円が控除額と算出され、財産がこれ以下であれば税金の心配は不要でした。
これに対し、2015年以降の控除額は一律3千万円に法定相続人一人当たり6百万円を加えた額で、前記の家族構成の例では4千8百万円となり、財産がこれ以上であれば課税されるので、対象者がぐっと増えたのです。
この改正のため都市部では1割以上の人が課税されると言われるほど増えるのです。
アパート投資で相続財産の評価額を下げることが可能な理由
資金を借り入れてアパート投資をすると節税対策が可能な仕組みの核心は相続財産の金額の評価方法ですのでこれを概観してみます。
税額は相続税評価額に応じて定められた税率を乗じて算出しますが、その際、預貯金など金額が明確であれば額面通りの評価を受けます。
ところが土地や住宅にはそう言った客観的な額が存在しないため、決められたルールに沿って評価額が算出されます。
土地と上物それぞれ別個に計算され、土地は国税庁が定める路線価あるいは地方自治体が定める固定資産税評価額に基づき一定の調整をしたのち評価金額が決まります。
土地の場合、平均的には実勢市場価格の70~80パーセント程度だと言われており、アパートを建築すれば、さらに借地権割合という係数で調整され、さらに低い金額で評価されるのです。
建物は建築コストのおおむね半分とされる評価額にさらに、借家割合の調整で低く算出された金額で評価されます。
一方のアパート建築のための借入金は、負債なので資産から控除されるのですが、その額は当然実額です。
この結果、借入金でアパートを建てた事で、資産と負債が増加するのですが、資産の評価が低いのに対し負債の評価が実額なので、資産評価額が圧縮可能なのです。