法改正で2020年から連帯保証に限度額が設定される?法改正後の影響について

120年来の民法の見直し

明治29年に総則、物権、債権関連規定が、2年後の31年に親族、相続関連規定が制定されて以来、120年以上の長きに渡り国内の企業や消費者の民事取引のルールとして機能してきた民法の大幅な見直しが行われました。
見直された部分は、契約に関するルールが決められている債権に関する条文で、平成29年5月の参議院本会議で可決され、成立しました。
見直し事項が約200項目にもおよぶ大幅な改正です。

この改正の適用が始まる施行日は公布以後3年以内と決められていますが、東京オリンピックが開かれる2020年を目途とされているようです。
見直しの背景にはネット取引の普及といった時代の進化に対応し、消費者を保護する規定も充実されました。
この見直しは、賃貸借を中心に不動産関連事業に対しても多大な影響を与えるものと見込まれています。

多岐に影響を与える民法の見直し

今回の改正の柱の一つとして、当事者双方で利率を約束していないケースに使われる現在年5パーセントの法定利率の3パーセントへの引き下げがあります。
これは低金利が継続する現在の社会に適合しないと判断されました。

この率は社会情勢に応じて3年毎に1パーセント刻みで手直しする制度も併せて規定されました。
また、ネット通販など、不特定の消費者と同種の売買取引をするケースの取り決めについて、消費者が一方的に不利となる規約は無効とされます。

誰でもすぐに理解できると思いますが、長文で小さな文字で示される約款を十分読まずに「同意する」にチェックを入れ「OK」をクリックして契約し、後でトラブルになって泣き寝入りとなる消費者を減らす狙いがあります。

賃貸借に関しても影響を与える見直し

敷金については従来明確な規定がなかったのですが新たに規定が盛り込まれ、これまでの賃貸借契約で盛り込まれていた慣例に沿った規定として整備されました。
賃貸借物件の家主の修繕の義務についても規定が明文化され、賃借人の責任で修繕が必要となったケースは免れるとされました。
ただし、この規定をもってしても、修繕の原因が賃貸人、賃借人のどちらの責任かという事実認定は依然として争点として残ります。

連帯保証に極度額の設定

保証人を保護する観点から、金銭債務などを個人が保証するケースで限度額を決めていなければ無効とする見直しは既に平成16年に行われていました。

今回は、さらに広い範囲で個人保証人を保護する観点から、賃貸借契約など個人保証も対象とされました。
個人の保証人が責任を負う最高金額を定め、書類かデータで契約されていない場合は無効とされます。
具体的に不動産賃貸取引への影響を見ると、確定した遅延家賃元本以外に遅延損害金が発生しているケースでも、その合計額が保証人の限度額となる事です。
なお、賃料や保証人の資力等を勘案して不当に高額に設定された限度額は、民法が定める公序良俗違反とみなされ無効とみなされる恐れもあります。

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